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「円高」こそ経済安全保障に適うのではないかという素朴な疑問…高市政権はなぜ供給網の強靭化だけを謳うのか | 政治・経済・投資 | 東洋経済オンライン
ニュース概要
日本の経済安全保障の議論では、「供給網の強靭化」ばかりが叫ばれ、「強い通貨」が無視されている。そのような政策ははたして持続可能なのか。
解説
最近、テレビやニュースで「経済安全保障」という言葉をよく耳にするようになりましたね。これは、国が経済的な面から安全を守ろうとする考え方のことです。特に、食料やエネルギー、半導体といった、私たちの生活に欠かせないものが海外からの供給に頼りすぎていると、もし何かあったときに困ってしまう。だから、国内での生産を増やしたり、供給ルートを多様化したりして、いざという時でも困らないようにしよう、というのが「供給網の強靭化」と呼ばれる動きです。
しかし、この議論の中で、ある重要な視点が抜け落ちているのではないか、という疑問が投げかけられています。それは、「強い通貨」、つまり「円高」の視点です。なぜ円高が経済安全保障に関わるのでしょうか?
考えてみてください。円が強くなると、海外から物を買うときに、より少ない円で済むようになります。例えば、原油や小麦といった輸入に頼る資源は、円高になればなるほど安く手に入りますよね。これは、海外からの供給が滞った時に、国内の企業や消費者が受ける打撃を和らげる効果があります。まるで、災害に備えて食料や水を備蓄するように、円高は「輸入物価の安定」という形で、私たちの経済的な安全を守るクッションになる、と考えることもできるのです。
一方で、現在の日本の政策議論では、この「強い通貨」という側面があまり注目されていません。むしろ、輸出企業にとっては円安の方が有利だとされ、政府も円安を容認するような姿勢が見られます。確かに、円安は海外に製品を売る企業にとっては追い風となり、一時的に経済を活性化させる効果も期待できます。しかし、その裏側で、輸入物価は高騰し、私たちの生活費を圧迫したり、原材料費が上がって国内産業の競争力を低下させたりするリスクも抱えています。
経済安全保障を考えるとき、単にモノの供給ルートを確保するだけでなく、そのモノを安定した価格で手に入れられる「購買力」も非常に重要です。もし、供給ルートは確保できても、円が弱すぎて高値でしか買えないとしたら、それは本当に「安全」と言えるのでしょうか。この問いは、私たちのこれからの暮らしや、日本の経済のあり方を考える上で、とても大切な視点を与えてくれます。
関連データ
今後の予測
今後の日本の経済安全保障政策は、いくつかのシナリオが考えられます。
一つ目は、「現状維持シナリオ」です。引き続き「供給網の強靭化」に重点を置き、国内生産の強化やサプライチェーンの多様化を進めるでしょう。この場合、円安が輸出企業に有利に働き、GDP成長を促すという考え方が根強く残るかもしれません。しかし、その代償として、輸入物価の高止まりや、家計への負担増が続く可能性も考えられます。企業はコスト上昇分を価格転嫁せざるを得なくなり、物価上昇が国民生活を圧迫する状況が続くかもしれません。
二つ目は、「通貨の視点を取り入れるシナリオ」です。円高がもたらす輸入物価の安定効果を再評価し、経済安全保障の一環として通貨の安定、ひいては「強い円」を目指す議論が浮上する可能性です。これは、短期的な輸出競争力よりも、長期的な国内経済の安定と国民生活の保護を重視する考え方と言えます。もしこの方向へ進むと、海外からの資源や食料の調達コストが下がり、国内物価の安定に寄与するでしょう。ただし、輸出企業にとっては逆風となるため、産業構造の転換や新たな成長戦略が求められることになります。
三つ目は、「国際協調強化シナリオ」です。単独で経済安全保障を追求するのではなく、友好国との連携を深め、共同で供給網を構築したり、資源の共同調達を進めたりする動きが加速する可能性です。これにより、個々の国のリスクを分散し、より広範な経済圏での安定を目指すことになります。このシナリオでは、円の強弱だけでなく、国際的な信頼関係や外交努力がより重要になってくるでしょう。どのシナリオに進むにしても、私たちの生活に密接に関わる重要な選択となることは間違いありません。
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