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business2026/6/17 17:00:00
エア・ウォーター、処分減免で集めた「不正告白」875件 粘りの対話会で沈黙崩す (ガバナンスの今・未来)

エア・ウォーター、処分減免で集めた「不正告白」875件 粘りの対話会で沈黙崩す (ガバナンスの今・未来)

出典: 日経ビジネス (原典を開く)

ニュース概要

企業不祥事が相次ぐ中、「社内リニエンシー制度」が脚光を浴びている。不正に関与した社員の自己申告と引き換えに社内処分を減免するもので、会計不正があった産業ガス大手のエア・ウォーターは独自の工夫で申告を集めた。ただ産業界での浸透は道半ばで、申告者らの保護と円滑な調査の両立に課題もある。

解説

企業で不祥事が明るみに出るたびに、「なぜもっと早く分からなかったのか」「どうして誰も声を上げなかったのか」という声が聞かれますよね。実は、不正行為に関わってしまった社員自身が、その事実を会社に打ち明けることで、処分が軽くなるかもしれないという制度が注目を集めています。それが「社内リニエンシー制度」です。

この制度は、もともと公正取引委員会が企業間のカルテル(談合)を摘発する際に使っている「課徴金減免制度」をヒントに、企業内で不正行為を見つけるために導入され始めました。不正に関わった人が「実は私も加担していましたが、正直に話します」と名乗り出れば、会社からのペナルティが軽減されるという仕組みです。これによって、会社側は表に出てこなかった不正の全貌を把握しやすくなり、再発防止策を立てる上でも貴重な情報を得ることができます。

産業ガスを扱う大手企業エア・ウォーターでは、過去に会計不正が発覚したことを受けて、この社内リニエンシー制度を独自に工夫して導入しました。単に「申告すれば処分を軽くする」と呼びかけるだけでなく、不正に関わった社員一人ひとりと粘り強く対話を重ねる場を設けたそうです。これは、不正に関わった社員が「本当に大丈夫なのか」「告白したらどうなるのか」といった不安を抱えるのは当然だからです。安心して打ち明けられる環境を作ることで、沈黙を破り、なんと875件もの不正告白が集まったといいます。これだけの数の申告があったことは、同社の粘り強い努力と、社員が「会社を良くしたい」という気持ちを持っていたことの表れかもしれません。

しかし、この制度が日本の多くの企業に広まっているかというと、まだまだ道半ばのようです。不正を申告した社員の個人情報や、その後の職場での立場がどうなるのかといった「保護」の問題と、会社が不正の全体像をスムーズに調査できる「円滑な調査」という二つの側面を、どうバランス良く両立させるかが大きな課題となっています。申告した人が不利益を被るようなことがあれば、制度そのものが機能しなくなってしまいます。一方で、会社としては事実を正確に把握し、問題解決に繋げたい。このジレンマをどう乗り越えていくのかが、今後の企業のガバナンス(企業統治)を考える上で非常に重要になってきます。

不正は企業にとって信頼を失墜させるだけでなく、経営にも大きなダメージを与えます。だからこそ、不正を未然に防ぎ、もし起きてしまった場合には早期に発見して解決するための仕組みが不可欠です。社内リニエンシー制度は、そのための強力なツールの一つとして、今後さらに注目されていくでしょう。

関連データ

エア・ウォーターの不正告白件数
875件
出典:日経ビジネス
制度の原型
公正取引委員会の課徴金減免制度
出典:一般知識
制度導入の背景
企業不祥事の増加
出典:日経ビジネス

今後の予測

社内リニエンシー制度は、今後さらに多くの企業で導入が進むと予想されます。特に、大企業だけでなく、中小企業においても導入の動きが加速する可能性があります。その背景には、企業規模に関わらず不正リスクが高まっていることや、サプライチェーン全体での透明性が求められるようになることがあります。

一方で、制度が形骸化しないためには、告白者の保護を徹底し、報復人事や不利益な扱いを絶対に許さないという強いメッセージを経営層が発信し続けることが不可欠です。独立した第三者機関が告白を受け付けたり、専門家が相談に応じたりする仕組みがより一般的になるかもしれません。また、不正の告白があった際に、ただ処分するだけでなく、再発防止策を具体的にどう実行していくか、企業文化をどう変えていくかという点にまで踏み込んだ対応が求められるようになるでしょう。

将来的には、AIを活用して不正の兆候を早期に検知するシステムと、社内リニエンシー制度が連携することで、より強固な不正対策が構築される可能性もあります。しかし、最終的には社員一人ひとりの倫理観と、会社全体で「不正は許さない」という意識を共有できるかが、制度の成否を分ける鍵となるでしょう。

ニュースタイムライン

  1. 2026年6月3日

    損保代理店の「自己点検」で問われるガバナンスの真価、損保会社と代理店に求められる「統治の質」を元金融庁検査官が6つの観点から提言 - ダイヤモンド保険ラボ

    ダイヤモンド・オンライン

  2. 2026年6月9日

    急拡大のひずみが露呈、監視委が暴いたムームー証券のずさんなガバナンス・・・あの「口座乗っ取り事件」の遠因にも? | ビジネス | 東洋経済オンライン

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  3. 2026年6月10日

    企業価値向上の王道は成長投資 新CGコードが導く攻めのガバナンス (会計・財務のサイエンス)

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  4. 2026年6月10日

    ホンダ、巨額赤字で有力OBが三部社長に退任勧告…裏で進むガバナンス改革と次期社長候補に浮上した「40代幹部の正体」 | ビジネス | 東洋経済オンライン

    東洋経済オンライン

  5. 2026年6月11日

    改訂CGコードが示す取締役会改革 成長の道筋を議論する場に (実践コーポレートガバナンス)

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  6. 2026年6月15日

    浜岡原発データ不正の進行中に10年間在任!中部電・橋本社外取「総会勇退」にくすぶる不満とガバナンスの死角 - 社外取10821人の全序列【2026最新版】熱狂バブルの落とし穴

    ダイヤモンド・オンライン

  7. 2026年6月16日

    なぜテムズ・ウォーターはこれほど深刻な窮地に陥っているのか?

    BBC Business

  8. 2026年6月16日

    テムズ・ウォーター、政府が救済案に反対し国有化へ一歩前進

    BBC Business

  9. 2026年6月16日

    テムズ・ウォーターの国有化、政府が救済案に反対し一歩前進

    The Guardian Business

  10. 2026年6月16日

    テムズ・ウォーターの潮目が変わる:特別管理が最善か | ニールス・プラトリー

    The Guardian Business

参考引用

処分減免で集めた「不正告白」875件

日経ビジネス

粘りの対話会で沈黙崩す

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