
エア・ウォーター、処分減免で集めた「不正告白」875件 粘りの対話会で沈黙崩す (ガバナンスの今・未来)
出典: 日経ビジネス (原典を開く)
ニュース概要(出典記事の要点)
企業不祥事が相次ぐ中、「社内リニエンシー制度」が脚光を浴びている。不正に関与した社員の自己申告と引き換えに社内処分を減免するもので、会計不正があった産業ガス大手のエア・ウォーターは独自の工夫で申告を集めた。ただ産業界での浸透は道半ばで、申告者らの保護と円滑な調査の両立に課題もある…
※ 上記は出典記事の要約です。本サイト独自の分析・背景解説は下記をご覧ください。
解説
企業で不祥事が明るみに出るたびに、「なぜもっと早く分からなかったのか」「どうして誰も声を上げなかったのか」という声が聞かれますよね。実は、不正行為に関わってしまった社員自身が、その事実を会社に打ち明けることで、処分が軽くなるかもしれないという制度が注目を集めています。それが「社内リニエンシー制度」です。
この制度は、もともと公正取引委員会が企業間のカルテル(談合)を摘発する際に使っている「課徴金減免制度」をヒントに、企業内で不正行為を見つけるために導入され始めました。不正に関わった人が「実は私も加担していましたが、正直に話します」と名乗り出れば、会社からのペナルティが軽減されるという仕組みです。これによって、会社側は表に出てこなかった不正の全貌を把握しやすくなり、再発防止策を立てる上でも貴重な情報を得ることができます。
産業ガスを扱う大手企業エア・ウォーターでは、過去に会計不正が発覚したことを受けて、この社内リニエンシー制度を独自に工夫して導入しました。単に「申告すれば処分を軽くする」と呼びかけるだけでなく、不正に関わった社員一人ひとりと粘り強く対話を重ねる場を設けたそうです。これは、不正に関わった社員が「本当に大丈夫なのか」「告白したらどうなるのか」といった不安を抱えるのは当然だからです。安心して打ち明けられる環境を作ることで、沈黙を破り、なんと875件もの不正告白が集まったといいます。これだけの数の申告があったことは、同社の粘り強い努力と、社員が「会社を良くしたい」という気持ちを持っていたことの表れかもしれません。
しかし、この制度が日本の多くの企業に広まっているかというと、まだまだ道半ばのようです。不正を申告した社員の個人情報や、その後の職場での立場がどうなるのかといった「保護」の問題と、会社が不正の全体像をスムーズに調査できる「円滑な調査」という二つの側面を、どうバランス良く両立させるかが大きな課題となっています。申告した人が不利益を被るようなことがあれば、制度そのものが機能しなくなってしまいます。一方で、会社としては事実を正確に把握し、問題解決に繋げたい。このジレンマをどう乗り越えていくのかが、今後の企業のガバナンス(企業統治)を考える上で非常に重要になってきます。
不正は企業にとって信頼を失墜させるだけでなく、経営にも大きなダメージを与えます。だからこそ、不正を未然に防ぎ、もし起きてしまった場合には早期に発見して解決するための仕組みが不可欠です。社内リニエンシー制度は、そのための強力なツールの一つとして、今後さらに注目されていくでしょう。
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