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負熱膨張材料の安全でクリーンな合成法を開発―環境負荷の低減、精密機器の熱制御に適した微粒子化に成功―
出典: 京都大学 (原典を開く)
ニュース概要
山本隆文 理学研究科教授(研究当時:東京科学大学特定教授)、西久保匠 東京科学大学特定助教(兼:神奈川県立産業技術総合研究所常勤研究員)、東正樹 同教授、ケネス・ポッペルマイヤー 米国ノースウェスタン大学(Northwestern University)教授らの研究グループは、加熱すると体積が収縮する「負熱膨張」という性質を持つペロブスカイト型酸化物 BiNi1-xFexO3の…
解説
皆さんは「熱膨張」という言葉を聞いたことがあるでしょうか? ほとんどの物質は、温めると体積が膨らみ、冷やすと縮みます。これは私たちの日常生活でもよく見かける現象で、例えば夏の線路が伸びて歪んだり、冬に水道管が凍結して破裂したりするのも、この熱膨張が関係しています。しかし、世の中にはこの常識とは逆の動きをする、ちょっと変わった物質が存在します。それが「負熱膨張材料」です。
京都大学の研究グループが今回発表したのは、この負熱膨張材料の一つである「ペロブスカイト型酸化物 BiNi1-xFexO3」という物質を、より安全で環境に優しい方法で作る技術です。これまでの負熱膨張材料の合成には、高い温度や圧力が必要だったり、環境に負荷をかける物質を使ったりすることが課題でした。例えば、高圧合成法では、文字通り非常に高い圧力をかけながら材料を作るため、設備も大がかりになり、コストもかさみます。また、使われる試薬によっては、環境への配慮も必要になってきます。
今回の研究では、そうした従来の課題を解決し、もっと手軽に、そしてクリーンに負熱膨張材料を合成できるようになった、というのが大きなポイントです。具体的には、大気圧に近い条件で、しかも比較的低い温度で材料を作れるようになりました。これは、製造コストの削減や、環境への影響を減らすことにつながります。さらに、この新しい方法でできた材料は、粒子が非常に細かく、均一であることも分かりました。材料が微粒子であることは、精密機器の熱制御において非常に重要です。例えば、スマートフォンやパソコンの内部では、たくさんの部品が密集しており、熱が出たり冷えたりすることで、わずかながらも膨張・収縮を繰り返しています。このわずかな動きが、機器の故障の原因になることもあります。
負熱膨張材料は、このような「熱による膨張」を打ち消す働きがあります。例えば、熱で膨らむ部品の近くに負熱膨張材料を配置すれば、全体としての体積変化を抑えることができるのです。まるで、熱によるプラスの膨張を、マイナスの膨張で相殺するようなイメージですね。今回の研究成果は、これまで高価で製造が難しかった負熱膨張材料を、もっと身近なものにする可能性を秘めています。私たちの身の回りの精密機器が、より長く、より安定して使えるようになる未来が、少しだけ近づいたと言えるでしょう。
関連データ
今後の予測
今回の研究成果は、負熱膨張材料の普及を大きく後押しする可能性があります。まず考えられるシナリオとしては、精密機器分野での応用が加速することです。スマートフォンやタブレット、IoTデバイスなど、小型化・高機能化が進む現代の電子機器では、熱管理が非常に重要です。今回の技術によって、より安価に、そして安全に負熱膨張材料が供給できるようになれば、これらの機器の耐久性向上や性能安定化に貢献するでしょう。例えば、スマートフォンの内部に組み込むことで、バッテリーの劣化抑制やプロセッサの熱暴走防止に役立つかもしれません。
もう一つのシナリオは、新たな産業分野での活用です。例えば、航空宇宙分野や医療機器など、極限環境下での精密な動作が求められる分野では、熱による材料の変形は致命的です。今回の技術で得られる微粒子化した負熱膨張材料は、既存の材料に混ぜ込んで複合材料として利用することで、熱膨張を抑制する「ゼロ膨張材料」の開発にもつながる可能性があります。これにより、より高性能で信頼性の高い部品が開発され、これらの分野の技術革新を促進するかもしれません。ただし、材料の量産性や、コストパフォーマンスのさらなる改善が今後の課題となるでしょう。また、大規模な製造プロセスへの移行には、まだ時間と研究開発が必要となる可能性も考えられます。
ニュースタイムライン
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参考引用
“「負熱膨張」という性質を持つペロブスカイト型酸化物 BiNi1-xFexO3の安全でクリーンな合成法を開発
― 京都大学
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