
査読は「ほぼ破綻」している――生成AI時代の研究成果公開を、もう一度設計し直す:JSAI2026 企画セッション「生成AI・プレプリント時代における研究成果公開の再設計」開催報告|一般社団法人 情報科学技術協会(INFOSTA)
ニュース概要
2026年6月9日、人工知能学会全国大会(JSAI2026/Gメッセ群馬)の2日目に、私たちINFOSTA(情報科学技術協会)が企画したセッション 「生成AI・プレプリント時代における研究成果公開の再設計 ― トップカンファレンス文化はどこへ向かうのか」 を開催しました。
解説
学術論文の世界で、長らくその信頼性の要とされてきた「査読」という仕組みが、いま大きな岐路に立たされています。特に生成AIの進化と、発表前の論文を公開する「プレプリント」の普及が、この査読システムを「ほぼ破綻している」とまで言われる状況に追い込んでいるのです。
査読とは、研究者が論文を発表する前に、その分野の専門家が内容を評価し、間違いがないか、新しい知見があるかなどをチェックするプロセスです。これにより、質の高い研究だけが世に出るようにし、学術的な信頼性を保ってきました。しかし、最近ではAIが書いたような論文が増えたり、研究の数が爆発的に増えたりしたことで、査読者の負担が限界に達しています。査読者も人間ですから、すべての論文を隅々までチェックするのは非常に難しいのが現状です。
さらに、プレプリントの台頭も大きな変化をもたらしています。これは、査読を通る前に論文を公開する仕組みで、研究成果をいち早く共有できるメリットがあります。しかしその一方で、査読されていない情報が先行して広まることで、情報の信頼性について疑問の声も上がっています。特に、生成AIが書いた論文がプレプリントとして公開され、それがそのまま広まってしまうリスクも指摘されています。
このような状況を受けて、情報科学技術協会(INFOSTA)が「生成AI・プレプリント時代における研究成果公開の再設計」というテーマで議論を行ったのは、まさにタイムリーな動きと言えるでしょう。これまでの「トップカンファレンス文化」と呼ばれる、特定の権威ある会議での発表が重視される慣習も、見直しを迫られています。研究の質をどう保ち、どう評価していくのか。そして、研究成果を社会にどう伝えていくのか。これらの問いに答えるためには、これまでのやり方にとらわれず、新しい評価基準や公開の仕組みを真剣に考える必要があります。研究者だけでなく、一般の人々にとっても、信頼できる情報を見極める力がこれまで以上に求められる時代になってきているのです。
関連データ
今後の予測
今後、学術論文の公開と評価のあり方は大きく変わっていくと予測されます。
**シナリオ1:AI活用による査読の効率化と多角化** AIが査読の一部を担うことで、初期スクリーニングや盗用チェック、形式的な誤りの検出などが効率化されるでしょう。また、査読者も単一の専門家だけでなく、複数の分野の専門家や、時にはAIの意見も取り入れた多角的な評価システムが導入される可能性があります。これにより、査読のスピードと質が向上し、信頼性の維持が図られます。
**シナリオ2:プレプリントの地位向上とポストレビューの浸透** プレプリントが「暫定的な研究成果」として市民権を得て、公開後にコミュニティ全体で評価を行う「ポストレビュー」が主流になるかもしれません。これは、査読前の論文でも活発な議論を促し、より迅速な知識共有を実現します。ただし、情報の信頼性を担保するためのガイドラインや、誤った情報が拡散した場合の訂正メカニズムの確立が不可欠となります。
**シナリオ3:新しい評価指標の登場とブロックチェーンの活用** 論文の引用数や発表ジャーナルの権威だけでなく、オープンサイエンスへの貢献度、データ公開の有無、再現性の高さなど、多様な評価指標が導入されるでしょう。さらに、ブロックチェーン技術を用いて、論文の改ざん防止や査読履歴の透明化を図る動きも出てくる可能性があります。これにより、研究成果の信頼性が技術的に保証され、より公平な評価が可能になるかもしれません。
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参考引用
“査読は「ほぼ破綻」している
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