
キーエンス「営業の『訪問数さえ増やせば』は効率無視」 打率との因果を見よ (キーエンス流「性弱説経営」)
出典: 日経ビジネス (原典を開く)
ニュース概要
書籍『キーエンス流性弱説経営』の著者による連載。今回はKPIの恣意的な運用を続けて優秀な社員のやる気を削ぎ続ける会社の例を出しながら、キーエンスが同じ状況で何に着目し、どう社員を育てるかを解説する。
解説
皆さんの会社では「営業の訪問数を増やせば、売上が上がる!」なんて声を聞いたことはありませんか?実はこれ、一見するともっともらしいのですが、効率を無視した考え方になってしまう落とし穴があるんです。
今回ご紹介するキーエンスという会社は、センサーなどの精密機器を扱うメーカーで、非常に高い利益率を誇ることで知られています。彼らは、このような「訪問数を増やせばいい」という単純な考え方ではなく、もっと本質的な部分に目を向けています。例えば、営業担当者がたくさんのお客様を訪問しても、それが契約に結びつかなければ、結局のところ時間と労力の無駄になってしまいますよね。キーエンスでは、単なる訪問数ではなく、「打率」に注目する、と例えられます。つまり、どれだけお客様の課題を解決し、契約に繋げられたか、という質の部分を重視しているのです。
多くの会社では、目標(KPI)を設定する際に、達成しやすい数字や、計測しやすい数字を安易に選びがちです。例えば、「1日10件訪問」といった具合です。しかし、これでは社員は「とりあえず訪問すれば良い」と考えてしまい、お客様のニーズを深く探ったり、質の高い提案をしたりする努力がおろそかになりかねません。結果として、優秀な社員ほど「こんな無意味な目標のために時間を費やすのは嫌だ」と感じ、やる気をなくしてしまうこともあります。
キーエンスが着目するのは、訪問数そのものではなく、「なぜこの訪問はうまくいかなかったのか?」「どうすればもっと良い提案ができたのか?」といった、それぞれの営業活動の「質」と「学び」です。彼らは、社員が自ら考え、改善していくための仕組みを重視しています。例えば、営業担当者が顧客訪問から戻ってきたら、その日の結果だけでなく、どのような話をして、何が課題だったのかを詳細に共有し、チーム全体で改善策を話し合うといった文化があります。これにより、個人の経験が組織全体の知識となり、営業力全体の底上げに繋がるのです。
このように、表面的な数字だけでなく、その裏にある「なぜ?」を深掘りし、社員の成長と組織の学習を促すことが、キーエンスの高い生産性の秘訣と言えるでしょう。私たちも、日々の仕事の中で、ただ目の前のタスクをこなすだけでなく、その「質」を高めるにはどうすれば良いか、常に問い続けることが大切ですね。
関連データ
今後の予測
今後、多くの企業が営業活動の効率化や生産性向上を追求する中で、キーエンスのような「質」を重視するアプローチがさらに注目されるでしょう。一つ目のシナリオとして、AIやデータ分析ツールの進化により、営業担当者の活動データ(訪問先、商談内容、成約率など)がより詳細に分析できるようになり、「打率」をリアルタイムで可視化・改善する仕組みが普及する可能性があります。これにより、単なる訪問数などの量的な目標設定から、質と成果に直結する目標設定へとシフトが進むでしょう。
二つ目のシナリオは、リモートワークやオンライン商談の定着により、物理的な訪問数そのものの重要性が低下し、オンラインでの顧客エンゲージメントや情報提供の質がより重視されるようになることです。この場合、営業担当者は、限られた接触機会の中でいかに顧客の課題を深く理解し、的確なソリューションを提供できるかが問われるようになります。結果として、個人のスキルアップや情報共有による組織的な学習が、より一層重要になるでしょう。
一方で、三つ目のシナリオとして、依然として多くの企業で「行動量=成果」という旧来の考え方が根強く残る可能性も考えられます。特に、変化を嫌う組織や、成果を客観的に評価する仕組みが未成熟な企業では、表面的なKPIに固執し、優秀な人材の流出や組織全体のモチベーション低下を招くリスクもはらんでいます。
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